祭りの後で

 茹だる様な暑さの真夏にも関西には大きな祭りが有ります。一つは京都の八坂の祇園祭で、もう一つは大阪の天満の天神祭で有る。夏祭りは他にも多数有り。佐太天神宮の夏祭も天満宮と同時期に有り。荘厳で且つ華麗な祇園祭りは千年の伝統を有する八坂神社の祭礼で有る。宵山、神輿渡御、山鉾巡行、花傘巡行等が有名。天神祭りは天満の天満宮で宵宮の鉾流神事、催太鼓、獅子舞、夏大祭の陸渡御、船渡御、水上祭等が行われ。大川に渡御船、篝火船が出奉納花火も上がる、火と水の祭典でも有る。祇園祭と同様天神祭もに日本三大祭りの一つでも有る。
 京都の祇園祭りも終わった或る日、祖母は遠縁の親戚の五十回忌の法事に出かけたが腰を痛めて親戚の家に泊まり込んでしまった。二三日して親戚の女に付き添われて帰って来た。
「みっともない、恥知らず、御母はんたら、あんな女をつれて帰って来て、出戻りの不倫の子やないか」母はぼろくそで有った。
 三女の本江は一度結婚に失敗し実家に戻って居ったので有った。実家には兄嫁が居て居辛らかったので有る。
「勉ちゃんは未だ嫁御の来手が無いのんか」三十過ぎの男も子供扱いで有った。
「これ、何処を弄って居る、はしたない事をするで無い」叱られても堪え無いらしい。
 女は勉の祖母とめの介護の世話丈かと思って居たら。掃除、洗濯、食事の用意迄させられてしまった。台所で食事の片付けをして居った女の御臀を勉は撫でてしまったから大変な事に。
「あんた、今何したん」「相変わらずやね、幾つに成っても子供みたいやねえ」「私に気でもが有るのんか」女は夫婦に成る気に成ってしもうた。
 勉が座敷で昼寝をして居ると女も「うちも昼寝をしよううと」と言っては座布団を枕に勉と並んで仲良く昼寝をしては足で突付いて遊んで居ったら母に見つかってしまって。
「こんな所で何をして遊んで居る」又、叱られてもしもうた。「御母はんもええかげんや、今まで散々偉そうにして私を苛めて置いて、わてに尿糞の世話迄させる気やろか、あんたが全部するねんえ」
「なあ、良い物あげよか」女はスカートをたくし上げ、何やら淫らに下着を下ろし足で器用に挟むんで。 本に下品な女で有った。離縁されたのも無理は無かった。
「あんた、何処へ行くのん」「小便に」「怒ったんか、私もしとこ」女は便所まで付いて来てしまった。「明日は佐太天神宮の夏祭やで、何やら楽しいね、勉ちゃん二人で天神さんに参るろな、なあ序に夫婦に成ってしまわへん」女は尿を放き乍言った。
 勉が風呂に入って居ると。「御背中を御流ししますわ」と言い乍、裸の儘入って来てしもうた。
「意地悪の御母はんたが、一緒に入りややて、何考えてんねんやろね、間違いでも起きたら如何する気やろな」又、足で器用に悪戯をするので有った。「御免、男の人の前でおならを放いてしもうた」呆れた女で有った。おならの泡を手拭で受けて弄ぶので有った。「本江さんたらはしたない」呆れ返る男「これ、私のおそそばかりそんなに見詰めるで無い、恥ずかしいでは無いか、あ、これ、そんな悪さをするで無い」間違いが起きてしもうた。勉ははしたない事をしてしもうたので有る。
「これ、何時まで風呂に入って居るのじゃ」母は見てはいけない物を見てしまったので有る。
「阿呆、あんな悪さをしおって、やや子でも出来たら如何する心算じゃ、御祖母さんの世話を只でさしといて、これが人のする事か」女は何やら一人でぶつぶつ言い乍、蒲団を敷いて
「相撲を取らへん」子供見たいに戯れる女「これ、何をして遊んで居る」又又叱られてしもうた。枕を二つ並べ蚊帳を吊った。
 朝に成って。大便所に勉が入っており慌てた女は朝顔に用を足してしまって居る処を母に見られて。
「阿呆、あんな事しおって、一緒に何んか寝おって、寝小便は垂れなんだか」又、叱られてしもうた。
「もう、夫婦に成っ た心算か」御尻を叩かれてしもうた。
「今日は夏祭りじゃ、小言はもう言わぬが気付けられ」
 佐太天神宮の夏祭りで有った、天満でも天神祭で有る。太鼓方の指図で神輿が練り歩く、進んだり戻ったりで有る、人を焦らすので有る。神様の載る神輿と言えども勝手には進め無いので有る。其の太鼓方も役をして居る人の合図で太鼓を叩くので有る。神事は文化で有り伝統で有る。
 女は祭りを見て子供の頃を思い出し、余りの懐かしさに子供に成ってしまって、甘えるので有った。
 夜には灯篭に火も入り幻想的な夏の夜の日本の風景で有る。
 あれ程元気で有った祖母とめも歳には勝てず、寝込む日が多く成った。
 或る日、母は医者を呼んだ、祖母の様子がおかしいので有る。
「もう、歳じゃ、九十一か、何処も悪くは無いが老衰じゃ、注射は打っては診るが恐らく利かんで有ろう親戚を呼ばれた方が良い」祖母のとめは天寿を真っ当したので有った。辛い室戸台風や戦時中も逞しく生き延びて来たので有った。
「いやや、いやや、もっと長生きして百歳迄生きてほしい」子供の様に駄々を捏ね取り乱してしまう女。 祭りが終わり、祖母は他界した。女は泣く事も許されずにすまし顔で葬儀に参列して居った。
「うちは何をする為に此処におるのじゃ、もういやや、いやや、やや子が欲しい」女は錯乱し、粗相をしてしまったので有る。「本江さんたらはしたない」と言い乍寝間に連れて行き、はしたない事をしてしまったので有る。「黙って言う事聞け」勉は狼に成ってしもうた。
「何と言う女子じゃ、こんな処で尿垂れ何かしおって」「何でわてが尿の始末をせなあかんのんじゃ」
 女は元気一杯で有った、未だ結婚もして居ないのにやや子が出来てしもうた。人は死に、人は生まれるので有る。自然の輪廻で有る。勉は慌てて式を挙げ。やがて本江は女の子を産み落とした。一月程経って家族揃って佐太天神へ御宮参りに出かけた、女は何やら自慢気で幸せそうで有った。意地悪の姑も孫娘の顔を見たらら余り小言は言わ無く成った。しかし本江は相変らず下品で有った。夫の前で平気でおならを放いたりするので有った。



            2006−03−21−114−01−OSAKA



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